現役ミリタリーの最大のベネフィットのひとつと言えば健康保険。
アメリカでは医療費が非常に高額ということで有名です。ミリタリー退役という大きな節目を達成すると、米軍専用の健康保険であるこのTRICARE(トライケア)を引き続き利用することができます。
ところが、現役時代は医療費の自己負担が少なかった為、アメリカの健康保険がどのように機能しているのか不安になりませんか?
この記事では、退役軍人とその家族向けの TRICARE健康保険について、詳しく説明していきます。
TRICARE加入は退役後90日以内に行う必要があります。事前にプラン内容を調べ、タイミングを逃さないようにしましょう!
\この記事で分かること/
- TRICARE Retireeの基本情報
- 各プランの特徴
- TRICARE加入の流れ
TRICAREの公式サイトには、自分に最適なプランを見つけるための プランファインダーという便利な機能が用意されています。簡単な質問に答えるだけで、あなたに合ったプランを提案してくれます。
なお、眼科と歯科をカバーする保険は FEDVIP を通して加入する必要があることを覚えておきましょう。
トライケア健康保険:退役軍人とその家族
退役軍人とその該当する家族は米軍専用の健康保険であるTRICARE(トライケア)に引き続き加入することができます
TRICAREの資格ステータスは全てDefense Enrollment Eligibility Reporting System:DEERSの情報によって決定されています。
DEERSは個人の身元情報や国防総省との関連性、福利厚生、特権、資格の確認、そして連絡先を把握するために使用されている重要なシステムです。現役軍人の時にも非常に重要な役割を果たしていましたが、退役後もこのシステムは引き続き大きな役割を果たします。
リタイア後も変わらないこと
リタイア後もTRICAREの一部は現役時代と変わらず同じように利用できます。
- 軍病院:空きがある場合に限り、引き続き利用可能。
- ポータビリティー:引っ越し先や旅行中でも利用できる柔軟な保険。
- TRICARE Pharmacy(薬局プログラム):現役時代と同様に薬の受け取りが可能。
リタイア後に変わること
- TRICAREステータスの変更:現役(Active Duty:AD)から退役(Retired)に変更、退役米軍IDカードが発行される。
- 民間クリニックの利用:退役後90日以内にTRICAREに申し込みが必要。
- 保険料発生:退役後には健康保険料がかかる。
- 特定サービスの終了:現役時代に受けていた特定のサービスが受けられなくなる。例)Extended Care Health Option:ECHOのサービス
- メディケアとの連携:メディケア・パートAの資格がある場合、メディケア・パートBにも加入しなければTRICAREに加入出来ない。(メディケアの資格がある場合には自動的にTricare For Lifeに切り替わる)
まずやるべきこと
- どのようなプランがあるのか事前に調べる!
- DEERSの情報をアップデートする!
- リタイア後はすぐにリタイアIDを取得する!
- TRICAREに加入する!
退役後90日以内に、必ず自分でTRICAREに申し込みましょう。自動では加入されません。
トライケアプランの下調べ
まずはどのようなトライケアプランがあるのか、どのプランが自分たちに合っているのか調べる必要があります。
どのプランが良いかは各家庭によって様々。それぞれのプランにはメリット、デメリットがあるため、ご家族のライフスタイルや医療ニーズ、家族構成など、最も合ったプランを選ぶことが大切です。
選択時には以下のようなポイントを確認しておくと良いでしょう。
- スポンサーのステータス(退役、メディカルリタイア、Reserve、亡くなった場合)
- 居住地
- 米軍基地が近くにあるか
- Tricare ネットワークに加入した医療機関があるか
- アメリカ国内か日本など海外に住むか
- 医療ニーズ
- 紹介なしで自由に専門医にアクセスしたい
- 持病の有無
- リタイア時の軍人と扶養家族の年齢
- メディケアの有無
DEERS更新&リタイアID発行
退役後はDEERSの情報を退役軍人及びその家族として速やかにアップデートして下さい。
アップデートする方法は3つ
- オンライン:milConnect
- 電話:800-538-9552
- DEERSオフィスに出向く:最寄りのDEERSオフィスへ直接出向いて更新
アップデートしたDEERS情報を元に、家族は新しいRetired Dependent IDが、退役軍人は以前のCACから一新、Dependent IDと同じデザインのRetired IDが発行されます。
DEERSオフィスはWalk-inを受け付けているところもありますが、混雑している場合もあるので、余裕をもって早めにアポイントメントを取ることをおすすめします。
TRICAREに加入する
TRICARE健康保険に加入する場合には、リタイア日から90日以内に家族のニーズに合ったTRICAREプランを選んで加入の手続きをします。加入手続きは以下の方法で可能です。
- オンライン:milConnect
- 電話:East—Humana Military: 1-800-444-5445 / West—Health Net: 1-844-866-9378
- 郵便またはFAX:TRICARE East / TRICARE West
- TRICAREオフィスへ:最寄りのTRICAREオフィスへ直接出向いて加入
家族全員が同じプランに加入する必要はなく、それぞれのニーズに合わせてプランを選ぶことも可能です。
例)家族のニーズに合わせて、それぞれのプランに加入する
- ベテラン:TRICAREプライム
- 配偶者:TRICAREセレクト
- 子どもA(26歳):TRICAREヤングアダルト・プライム
- 子どもB(24歳):TRICAREヤングアダルト・セレクト
加入の際にネットワークに加入しているPrimary Care Manager:PCM(かかりつけ医)を選ぶ必要が出てきますが、必ず事前にクリニックに電話をしてそのPCM(かかりつけ医)が新しい患者を受け入れているか確認してからの方が手続きがスムーズです。
我が家はオンラインでTRICAREプランを選び加入。その際、サイトに載っていたPCM(かかりつけ医)のリストから、レビューが良く、家から近い方を選び、エラーも出ずスムーズで簡単に登録出来ました。
ところが後日、そのPCM(かかりつけ医)に初診の予約を取ろうとしたら、患者が多くて新しい患者を受け入れていない事実が発覚!慌てて新患者受け入れ可能な、別のPCMを一から探す羽目になりました (>_<)
Facebookのスパウスページなどを見ると、「公式TRICAREのPCMリストはアップデートするのが遅いので、PCMに電話をして受け入れ可能か直接聞くのが良い」というアドバイスがありました。
TRICAREを管轄する医療保険パートナー会社
お住まいの地域によってトライケアと提携する医療保険パートナー会社が変わってきますが、現在国防総省とパートナーを組んでいるのは下記の3つ。どの会社の管轄になるかはお住まいの地域で自動的に割り当てられます。
TRICARE Retireeの健康保険プラン一覧
退役後には下記のトライケア健康保険プランが用意されています。
リタイア後の主なプラン(アメリカ国内)はTRICARE PrimeまたはTRICARE Selectの2つです。
各プランの概要を説明していきます。
(上記プラン名をクリックすると記事内をジャンプできます)
TRICARE PrimeーRetirees
- かかりつけ医(Primary Care Manager: PCM)は、日常的なケアを担当し、必要に応じて他の医療機関に手配をします。
- 空きがある場合に限り、軍の病院やクリニックでかかりつけ医(PCM)を登録することができます。
- 専門医による健診・治療が必要とされた場合にはPCMからの紹介状が必要です。
- 一部のサービスは事前承認が必要です。
- 2年に1回の定期的な眼科検診がカバーされます。ただし医療的に必要な眼科治療はカバーされる場合があります。
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TRICARE SelectーRetirees
- 日常的なケアや専門的なケアのために、TRICAREが認めた医療機関を自分で選ぶことができます。
- ほとんどの専門的なケアに紹介状は必要ありません。
- ただ、一部のサービスには事前の承認が必要です。
- 定期的な眼科検診はカバーされません。ただし医療的に必要な眼科治療はカバーされる場合があります。
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TRICARE Select OverseasーRetirees
- アメリカ国外に住んでいる退役軍人とその家族が利用可能です。
- TRICAREセレクトの海外版で、世界中で利用が可能です。
- TRICAREプライムOverseaseとTRICAREプライムリモートは退役軍人とその家族は利用できません。
- ネットワーク外の医療機関も自由に選べますが、自己負担コストが上がる可能性があります。
- 海外の軍病院またはクリニックは空きがある場合に限り利用することが可能です。
- 医療機関でケアを受けたら一度全額自己負担で支払い、その後払い戻しの手続きをします。
- 多くの場合、紹介状なしで専門医の診療が受けられます。
- ただ、一部のサービスには事前の承認が必要です。
- 海外での緊急医療はネットワーク外でもカバーされ、事前の承認や紹介状は不要です。
- 定期的な眼科検診はカバーされません。ただし医療的に必要な眼科治療はカバーされる場合があります。
リタイア後に日本へ帰国するという方もいるかと思いますので、後日TRICARE Overseasは別記事でまとめます。
Tricare Overseasプログラムのオフィシャルサイトはこちら
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TRICARE Plus
- 特定の軍病院やクリニックで提供されているプライマリーケア(一次医療)プログラムです。
- このプログラムに参加するには登録が必要で、申請後、決定を受けた軍病院またはクリニックでのみ利用できます。
- それぞれの軍病院またはクリニックの責任者がこのプランの提供が可能か決定権を持っています。
- TRICAREプライム、Health Maintenance Organization:HMOや同様のプログラムに登録していない人(雇用主が提供するHMOや、Medicare Advantage(Medicare Part C)プランも含む)。
- 軍人の親、または義理の親も登録できる可能性があります。
- 登録した軍病院またはクリニックで専門医療を受けられるという保証はありません。
- 専門医による健診・治療が必要とされた場合には紹介状が出される場合がありますが、民間の医療機関に紹介され利用した場合、TRICAREはその費用はカバーしませんのですべて自己負担になります。
- 軍の薬局で処方薬を受け取ることが出来ます。
- 歯科ベネフィットはカバーされていません。
- 視力サービスはカバーされていません。
詳しいプランの内容はこちら
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Uniformed Service Family Health Plan(USFHP)
- USFHP:US Family Health Planは、米国の6つの地域にある特定の地域で利用可能です。地域に密着した非営利の医療機関を通じて提供されるTRICARE Prime同等のオプションです。
- TRICAREプライムと同じ医療料金で提供されています。
- 軍の病院や薬局が使えないため、民間の病院や医療機関を利用します。
- 専門医による健診・治療が必要とされた場合にはPCMからの紹介状が必要です。
- USFHPに加入した薬局のみ使えます。
- 一部のサービスは事前承認が必要です。
- 2年に1回の定期的な眼科検診がカバーされます。ただし医療的に必要な眼科治療はカバーされる場合があります。
詳しいプランの内容はこちら
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TRICARE Retired Reserve (TRR)
- 20年以上の兵役を完了し退役した60歳未満のリザーブ軍人(連邦職員健康保険プログラムに加入資格がない、または加入していない者)とその家族が利用できます。
- TRRはいつでも加入できます。
- 最初の保険料は2ヶ月分払いになります。
- 全世界で利用可能です。
- 海外の軍病院またはクリニックに空きがある場合に限り利用することが可能です。
- TRICARE Retired Reserveに加入中にリザーブ退役軍人が死亡した場合、遺族は引き続きカバーを受けられ、連邦職員健康保険プログラムの加入資格には影響しません。(再婚した遺族配偶者は資格を失います)
- 日常的なケアや専門的なケアのために、TRICAREが認めた医療機関を自分で選ぶことができます。
- 多くの場合、紹介状なしで専門医の診療が受けられます
- ただ、一部のサービスには事前の承認が必要です。
- 定期的な眼科検診はカバーされません。ただし医療的に必要な眼科治療はカバーされる場合があります。
- 60歳になるとTRICARE Retireesプライムまたはセレクトに加入できるようになります。(60歳の誕生日から90日以内に加入して下さい。もし90日を過ぎてしまった場合には最高12ヶ月前に遡って加入ができます。)
詳しいプランの内容はこちら
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TRICARE Young Adult (TYA)
- 対象:資格のあるスポンサーの未婚の成人扶養家族で21歳(大学生の場合は23歳)以上26歳未満の者。雇用主からの保険に加入していない場合に加入できます。
- プライムとセレクトの2種類から選択が可能です。
- プラン内容はTRICARE Retireeのプライムまたはセレクトに非常に似ていますが、保険料が違います。
- もしUSFHPエリアに住んでいる場合には、ネットワーク内の非営利医療システムに所属する医師からすべてのケアを受けます(処方薬も含む)。
- 有効なIDカードがなくてもTRICARE Young Adultに加入できます。カバレッジが開始されると通知がくるので、IDカードオフィスで新しいIDを取得できます。
- 軍病院やクリニックで受ける医療サービスには費用がかかりませんが、入院ケアを利用する場合には、少額の「日額費用(per diem)」がかかることがあります。
詳しいプランの内容はこちら
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TRICARE For Life (TFL)
- TRICARE For Life (TFL)は、年齢に関係なくメディケア Part AとBに加入しているTRICARE被保険者のために用意されています。
- メディケア Part Aに加えPart Bの資格を持っているTRICARE被保険者は、自動的にTRICARE for Lifeの保険も無料で受けることができます。
- メディケアへの加入は65歳になる2ヶ月前までには手続きをすると、保険を切らす恐れが無くなります。
- TRICARE for Lifeは無料ですが、メディケア・パートBに加入(有料)して初めてそのベネフィットを受けることができます。
- 米国および米国の領土では医療サービスを受けた際には、メディケアがまず医療費を支払い、その後TRICAREが第二保険プラン(TRICAREのDeductible(控除額)とCost-share(自己負担額)が適用されます。)として支払いを行います。ただし、どちらにもカバーされなかった医療費は自費で支払う可能性があります。
- メディケアは海外では使えないため、世界中で利用できるTRICARE for Lifeが海外でケアを受けた際の医療費を支払います。この場合でもメディケアには保険料を支払う必要があります。
- 軍病院やクリニックは空きがあれば利用可能です。
- メディケアおよびTFLでは以下のサービスは含まれていません。
- 長期介護
- 鍼治療
- 治療の有効性や安全性が完全に確認されていない治療や、臨床試験中の治療など
- 定期的な眼科検診
- 補聴器(軍人は別プログラム有)
- 処方箋薬はTRICAREでカバーされています。
- メディケアとTRICARE両方でカバーされているサービスの費用に関しては、TFL Cost Matrixを参照してください。
メディケア(Medicare)は、アメリカ合衆国の公的な医療保険プログラムで65歳以上の高齢者や一部の障害者など、特定の資格を持つ個人に対して提供されます。
- パートA(医療保険):入院、病院での医療、短期の介護施設でのケアなど、基本的な医療サービスを提供します。多くの人々にとって、パートAは保険料を支払っていれば無料です。
- パートB(医療保険):医師の診察、外来処方箋、予防接種、診断テストなどの医療サービスを提供します。パートBには保険料があり、受益者自身が支払う必要があります。
メディケアについて詳しく説明されている素晴らしい日本語の記事があるので、興味のある方はこちらから↓
Medicareを知る(1)ー Part A and Part B by Smart&Responsible
詳しいプランの内容はこちら、TFLは公式トライケアのポッドキャストでも聞けます。
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Veterans Administration (VA) Healthcare
TRICAREの他にも、VAヘルスケアという退役軍人全体を対象とした医療制度があり、特に障害を持つ退役軍人には優先的にカバーされます。また、特定の条件を満たす場合には、勤務期間が短くても例外的に利用できることがあります。軍人の家族はこの対象ではありません。
退役軍人がVAヘルスケアを利用できる場合、TRICAREと併用したり、VAヘルスケアのみを利用したりする選択肢があり、医療制度の利用の幅が広がります。
詳しい内容はVAウェブサイトをご確認ください。
準備が出来次第、VAヘルスケアについての記事をあげたいと思います。
90日以内にTRICARE Retireeに加入しなかった場合
退役後もTRICAREを途切れることなく継続したい場合、退役日から90日以内に加入手続きが必要です。
もし90日以内に加入しなかった場合、「レトロアクティブ・エンロールメント」をリクエストできます。これは、退役日に遡ってTRICAREの加入を有効にする方法ですが、過去分の保険料をまとめて支払う必要があります。
90日以内に加入せず、レトロアクティブ・エンロールメントもしなかった場合の対応策は次の通りです:
- トライケアの次のオープンシーズンまで待つ
- 結婚、子供の誕生、離婚、引っ越しなどのライフイベントがあった場合に加入
- 次のオープンシーズンまで軍病院及びクリニックで空きがある場合に限り診療を受けることができる
まとめ
TRICAREプライムは、軍施設やネットワーク内の医療機関を使いたい人向けで、紹介状が必要ですが医療費が低く抑えられます。
TRICAREセレクトは、軍施設が近くにない、または自分で医療機関を自由に選びたい人向けで、紹介状なしで専門医にかかれますが、自己負担が増える場合があります。
TRICAREにはさまざまなプランがあり、どれを選べば良いのか迷うこともあるかもしれませんが、まずはリタイア後のご家庭の状況を考慮しその上で、新しいライフスタイルに最も合ったプランを選んでください。
選択時には以下のようなポイントを確認しておくと良いでしょう。
- スポンサーのステータス(退役、メディカルリタイア、Reserve、亡くなった場合)
- 居住地
- 米軍基地が近くにあるか
- Tricare ネットワークに加入した医療機関があるか
- アメリカ国内か日本など海外に住むか
- 医療ニーズ
- 紹介なしで自由に専門医にアクセスしたい
- 持病の有無
- リタイア時の軍人と扶養家族の年齢
- メディケアの有無
もし選んだプランが自分に合わないと感じても、オープンエンロール期間であれば別のプランに変更することができます。また、ライフイベントがあった際にも、その都度プランを変更できるので安心です。
TRICAREのオフィシャルサイトでは質問に答えていくとあなたに最適なTRICAREのプランをピックアップしてくれる機能があるのでぜひ利用しましょう。
リタイア後に一番大きく変わるのがこのTRICARE。
この記事が少しでもみなさんのお役に立てれば幸いです。
あなたの体験談や質問を下記お気軽にのコメント下さい。
眼科と歯科をカバーする保険は FEDVIP を通して加入する必要があることを覚えておきましょう。
TRICARE Pharmacy(薬局プログラム)、歯医者&眼科のプログラムのFEDVIPは長くなるので別記事(準備中)でまとめていきたいと思います。
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