大切な人を亡くされたばかりで、心の整理がつかない中、手続きや書類の準備を考えるのは本当に大変なことですよね。今は深い悲しみの中、何から手をつけていいか分からないはずです。
でも、「Survivor Benefit Plan(SBP)」の手続きを知ることで、これからの生活に少しだけ安心を添えられるかもしれません。
この記事では、アメリカ退役軍人のご遺族がSBPを受け取るための手続きについて、DFAS(Defense Finance and Accounting Service)の情報をもとに説明します。
「何が必要?」「どこに連絡?」「いつまでにやるの?」といった疑問、あなたの負担を少しでも軽くできるよう日本語で心を込めてまとめました。
読み進めることで、SBPの全体像が見えてきて、手続きの不安が少しでもやわらぎますように。
\この記事で分かること/
- 退役軍人が亡くなった後にする手続き
- 退役軍人年金の止め方
- 軍人遺族年金(SBP)の申請方法

どうか無理せず、できることから少しずつ進めてみてくださいね。
退役軍人が亡くなったことを報告する
まず、退役軍人に関係する各機関に、死亡報告をする必要があります。
- Social Security Office(社会保障局)
- DFAS: Defense Finance and Accounting Service(米国国防総省財務会計局)
- VA: Veterans Affairs(米国退役軍人省)
この記事では、2番目のDFAS(米国国防省財務会計局)への手続きの方法を説明していきます。
DFASとは?どんな役割を担っているか
DFAS(ディーファス)は「Defense Finance and Accounting Service」の略で、米国国防総省財務会計局のことです。
退役軍人年金やSBP:Survivor Benefit Plan(軍人遺族年金)の支払い、会計処理などを担当しています。
そのため、初めの第一歩として「退役軍人が亡くなったこと」をDFASへ知らせ、退役軍人年金を止める必要があります。その後にSBPの申請手続きへと進みます。
「わたしがちゃんとできるだろうか…」と心配になるかもしれませんが、大丈夫です。
一歩ずつ、ゆっくりと進めていきましょう。
DFASの公式ページより退役軍人が亡くなった時のチェックリストがありますのでご確認ください。
SBP(米軍遺族年金制度)とは何か?配偶者にどう関係するか


SBP:Survivor Benefit Plan(米軍遺族年金制度)は、退役軍人の方が亡くなった後、ご遺族に継続的な収入を提供するための年金制度です。
SBPの詳しい内容はこちらの記事に書きましたので、併せて読んでみてください。


SBPへの加入の可否は、退役軍人は退役前に必ず手続きをしており、多くの場合、受け取り対象は配偶者としている人が多いです。



ベテランが兵役を通じて遺してくれた「想い」を、現実の生活の支えとして受け取るための制度です。
いつまでに手続きすればいいのか
SBPの申請には厳密な締め切りはありません
ですが、できるだけ早めに始めておくと、SBP受給までの流れがスムーズになります。
死亡報告から書類提出、審査・支給までには、早くても数週間〜数ヶ月かかるのが一般的で、支給が始まるまでの間、生活費が不安になることもあるかもしれません。
ご自身の負担にならない範囲で、少しずつ動き出してみてください。



あなたの大切な日々を守るための準備ですから、焦らず、一歩ずつ。
手続きの大まかな流れ


SBPの手続きは、以下のようなステップで進みます。
- DFASに退役軍人が亡くなった報告をする
- DFASからお悔やみの手紙が届く
- 必要書類を集め、書類を記入して署名
- DFASへ書類を提出する
- DFASでの審査及び手続き後、支払いが開始される
どのステップも、あなたの大切な未来を守るためのものです。
分からないことがあれば、いつでも誰かに頼ってください。



あなたはひとりじゃありません。
それでは、必要な手続きを詳しく見ていきましょう。
DFASに退役軍人が死亡したことを報告する
特に退役軍人の場合は退役年金を受給しているので、DFASに退役軍人が死亡したことを報告する必要があります。受理されると退役年金が止まり、過払いを避けることができます。
死亡報告の方法
- オンライン報告(24時間対応)
askDFASの「Notification of Deathフォーム」を使用。
Report a Retiree Death to DFAS - 電話
DFASカスタマーケアセンター:1-800-321-1080(平日午前8時〜午後5時 米国東部時間) - 郵送
Defense Finance and Accounting Service
U.S. Military Annuitant Pay
8899 E 56th Street
Indianapolis IN 46249-1300 - Fax:1-800-982-8459
この届け出に必要な情報
- 報告者の情報(氏名、メールアドレス、電話番号、住所)
- 退役軍人の氏名
- 退役軍人の社会保障番号(SSN)
- 死亡日
- 死因(Natural, Homicide, Pending, or Other)
- 婚姻状況
- 婚姻日(届出人が配偶者の場合)
死亡報告後におこることを把握する
まず、死亡報告後に何が起きるのか、大まかですが把握しておくと安心なのでまとめてみました。
- DFASは毎月の退役年金(ペンション)支払いを停止します
- 報告後約1週間の間に、DFASよりお悔やみの手紙が退役軍人の記録に基づいた受取人に郵送されます
含まれる書類:
- お悔やみの手紙
受取人がいない場合は法的代理人や最後の住所に送付 - SF 1174:Claim for Unpaid Compensation of Deceased Member of the Uniformed Service(未払い年金の請求書)
- DD 2656-7:Verification for Survivor Annuity(SBP年金申請書)
SBP加入者が亡くなった場合は、受給者宛に郵送される。
- お悔やみの手紙
- 亡くなった後に支払われた年金は、DFASにより一度全額を銀行から回収(共同口座でも例外なし)
- 退役軍人の最後の退役年金は未払い年金(AOP:Arrears of Pay)として、SF 1174(未払い年金の請求書)の提出により、亡くなった日付を元に再計算されて、指定された受取人に最終支給金が支払われる
DFASに必要書類提出の準備をする
お悔やみの手紙に添付されていた「返信すべき書類」を確認および記入し、追加提出書類をつけてDFASに提出する必要があります。(もし、この手紙がまだ届いていない場合でも、必要書類を集めたり手続きを始めても大丈夫です)
未払い年金の請求書|SF 1174:Claim for Unpaid Compensation of Deceased Member of the Uniformed Service
先の死亡報告をDFASにしたことにより、退役軍人が亡くなった後に支払われた退役年金を一度全て返金します。
DFASは退役軍人の死亡日と照らし併せ、日当計算をすることで退役軍人が生前に受給すべきであった正しい年金額を導き出します。その分を未払い年金として返金しますよというのが、この手続きの内容です。
DFAS公式ページ:How to Claim a Retiree’s Arrears of Pay Using the SF 1174
必要書類
- SF Form 1174:Claim for Unpaid Compensation of Deceased Member of the Uniformed Service(未払い年金の請求書)
- Death Certificate(死亡証明書)
- DD Form 2790:Custodianship Certificate of Minor Child(未成年の子どもの後見人証明書)-申請者が18歳未満の未成年である場合のみ必要
SBP遺族年金申請書|DD 2656-7:Verification for Survivor Annuity
SBPは軍人が亡くなった後も遺族を支える遺族年金として毎月支払われるよう、手続きを行う必要があります。すべての退役軍人は退役時、加入するか否か選択し手続きをしています。
加入していた場合でも自動では始まりませんので、辛い時期に難しい手続きにはなりますが、将来あなたを支える命のお金なので、諦めずにゆっくりでも手続きを進めましょう。
DFAS公式ページ:Start a Survivor Benefit Plan Annuity
必要書類
- DD 2656-7:Verification for Survivor Annuity(SBP遺族年金申請書)
- 2023年1月1日以降に亡くなった場合:セクション6は無関係のため、空欄で提出。
- 2022年12月31日以前に亡くなった場合:該当する可能性があるため、できるだけ記入。
- IRS W-4P:Withholding Certificate for Pension or Annuity(年金・年金受取に関する源泉徴収申告書)
- 米国に在住する方は提出
- 米国外に在住する方はこのフォームではなく、IRS Form W8ーBENを提出
- 直接振り込み申請フォーム(いずれか1つ)
追加提出書類(該当者のみ)
- Death Certificate:死亡証明書(死因記載あり)
- Citizenship Affidavit:市民権に関する宣言供述書。
- 米国外に居住していて、かつ申請者が退役軍人の子ども以外(例:配偶者や元配偶者等)の場合に必要です。
- このFormは記入後、公証人(Notary)のサインが必要です。
- IRS Form W8-BEN:Certificate of Foreign Status of Beneficial Owner for UnitedStates Tax Withholding and Reporting (Individuals)。外国人のための税務書類、非居住外国人で米国と租税条約がある国の市民(日本も含まれます)
- DD Form 2790:Custodianship Certificate of Minor Child(未成年の子どもの後見人証明書)-申請者が18歳未満の未成年である場合のみ必要
- DD Form 2788:Child Annuitant’s School Certification(子ども年金受給者の在学証明、18歳以上22歳未満で学生の方のみ)
- Legal Representative Documentation:申請書類を代理人が署名する場合は、委任状(POA)や後見人証明(Guardianship)など、法的代理人(Representative Payee)を証明する書類が必要
DFASに必要書類を提出する
ステップ3で準備した書類を下記のいずれかの方法でDFASに提出します。
- オンラインアップロード(推奨)
- askDFASよりPDFをアップロードする(すべての書類に退役軍人の氏名とSSNを明記)
- PDFはひとつの申請(チケット)につき3つまでしかアップロードできないので、できるだけ書類を3つ以内にまとめた方がよい。
- 申請時に登録したメールアドレスとパスコードは、進捗状況を確認する時に使うので、メモしておくとよい。
- 郵送
- DFAS – U.S. Military Annuitant Pay
8899 E 56th Street
Indianapolis, IN 46249-1300
- DFAS – U.S. Military Annuitant Pay
- FAX:800-982-8459
不明点がある場合は、各軍の退役軍人サポート組織(Retiree Service Organization)または、DFASカスタマーセンター(800-321-1080)にお問い合わせください。
DFASでの審査後、支払いが開始される
DFASは提出された申請(チケット)を元に書類を審査・手続きし、SBPが開始されます。
申請時に登録したメールアドレスにチケット提出済みのお知らせメールが届きますので、メールにある確認リンクをクリックすると進捗状況や返事などを見ることができます。
SBPの申請結果、受給詳細の手紙が届くよりも先に、SBPが振り込まれる場合があります。この場合は「Salary/Regular Income from DFAS」「Deposit Dfas-cleveland Mc Ann Pay」などと銀行明細に表示されます。
SBP手続きで注意すべきポイント4つ


SBP手続きで注意すべきポイントを4つご紹介します。
「こんなことでつまずくなんて…」落ち込まないように、先に気をつけるべきことを知っておくと安心です。
ゆっくり一緒に確認していきましょう。
①必要書類の不備で遅延することがある
SBPの手続きでは、たった一枚の書類の不備でも、全体の処理が止まってしまうことがあります。
たとえば、署名の記入漏れや間違いなど、ほんの小さなミスが原因になることも。
送る前には、もう一度チェックリストを見ながら、必要な書類がすべて揃っているか、しっかり確認してみてください。
辛い時期に手続きで苦労するのは心が折れそうですが、少しずつ対応していくと良いです。
②英語での書類作成に注意
SBPの手続きは、英語の書類、退役軍人制度など、専門的なことが多くて本当に大変です。
これはすごくハードルに感じる方が多いと思います。
そんなとき、無理にひとりで抱え込まず、専門家やサポート団体に相談することが大切です。
アメリカ国内にお住まいの方は最寄りのVSO(Veterans Service Organizaton)やTAPS(Tragedy Assistance Program for Survivors)などのサポート団体にお問い合わせください。
日本にお住まいの方は、遺族支援を受けることはさらにハードルが高くなります。現役軍人遺族への支援のみを扱っている場合もありますが、まずは最寄りの在日米軍サポートセンターにお問い合わせしてみてください。また、TAPS(Tragedy Assistance Program for Survivors)は日本に支部はありませんが、オンラインでも遺族支援を行なっていますので、ぜひ登録することをおすすめします。
「ここまで聞いていいのかな…?」と遠慮せず、わからないことや不安なことを聞いてみてください。
あなたの不安を少しでも軽くしてくれる存在が、きっと近くにいるはずです。
自分の心と体を大事にしながら、無理せず進めてくださいね。
③社会保障の遺族年金とは別の制度と理解する
ベテランが遺族がもらえる可能性のある遺族年金・補償にはSBPを含めて下記の3つがあります。
SBPは「軍の退役年金を引き継ぐ制度」であり、一般的な社会保障(Social Security)の「遺族年金」とは別の制度になります。また、軍務中または関連する病気や障害で亡くなった場合と承認された場合にはDIC(軍人遺族保証金)という制度もあります。
- Social Security Social Security Office管轄。
- SBP DFAS管轄。
- DIC VA管轄
この様に上記3つの年金は、手続きの窓口も違えば、支給条件や金額も異なります。
すべてを受け取れるケースもありますし、そうでないケースもあるため、それぞれの制度についても学ぶ必要が出てきます。
今は心が苦しく、頭にモヤがかかり、分かりづらい時かもしれませんが、少しずつ理解していけば大丈夫です。
④審査期間と支払い開始タイミングに差がある
SBPの書類を提出してから実際に支払いが始まるまでには、どうしても時間がかかります。
早くても数週間、長い場合は数ヶ月かかることもあるんです。
その間は生活費のやりくりが不安になることもあるかもしれません。
できるだけ早めに準備を始めておくことはもちろん大切ですが、「すぐには始まらないかもしれない」という心構えがあるだけでも、少し気持ちが楽になると思います。
何もかも一度にやろうとせず、できるところから始めてくださいね。
あなたのペースで、ちゃんと大丈夫ですよ。
2025年のSBP振込スケジュール
2025年のSBP振込スケジュールは下記の通りです。
金融機関によって、Early Early Pay(早期振込)に対応している場合があり、Navy Federal Credit Unionはそのひとつです。
受給対象月 | SBPの振込日 |
---|---|
January 2025 | February 3, 2025 |
February 2025 | March 3, 2025 |
March 2025 | April 1, 2025 |
April 2025 | May 1, 2025 |
May 2025 | June 2, 2025 |
June 2025 | July 1, 2025 |
July 2025 | August 1, 2025 |
August 2025 | September 2, 2025 |
September 2025 | October 1, 2025 |
October 2025 | November 3, 2025 |
November 2025 | December 1, 2025 |
December 2025 | January 2, 2026 |
まとめ|Survivors Benefit Plan(SBP)の手続きを安心して進めるために


SBPは、退役軍人の方が遺してくれた想いを、実際の生活の支えとして受け取るための大切な制度です。
慣れない書類や英語での手続き、不安な気持ちもたくさんあると思います。
でも、ひとつひとつ準備していけば、必ず前に進んでいけます。
この制度を正しく知り、ゆっくりでも確実に手続きを行うことで、ご自身やご家族の未来を守る一歩になります。



この記事が、少しでもあなたの心を軽くし、必要な行動の後押しになりますように。
なお、より詳細で正確な情報が必要な方は、以下の公式情報もぜひ参考にしてください。
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